物流のイロハ・坂本龍馬と国際物流

 

今年は徳川慶喜が政権を朝廷に返上した大政奉還から150年の節目の年である。そしてそれは薩長同盟を成し遂げ倒幕の機運を盛り上げ、船中八策を通じて大政奉還の素案を藩論にまでまとめ上げた土佐の豪傑坂本龍馬が京都で暗殺されてから150年にも当たる。

1867年10月14日、徳川慶喜は大政奉還を表明した。その約一月後の11月15日、龍馬は河原町の「近江屋」で、何者かに襲撃され、31歳の短い一生を終えた。

坂本龍馬については、歴史上の人物として有名であり、また、数年前にイケメン俳優である福山雅治さんがその役を演じたことで改めて脚光をあびたので、知っている人も多いと思います。参考までに

19歳で江戸に剣術修行にで、剣術修行中に、当時鎖国を敷いていた日本に開国を迫る黒船の来航を目の当たりにして尊攘派となるも、後に暗殺に行った勝海舟の世界観を聞いて、開国派としての境地を徐々に確立していくのである。尊攘派と開国派の対立が激化するなかで、犬猿の仲といわれた長州と薩摩両藩を倒幕という一点で同盟させ、自身の故郷である土佐藩にも働きかけ、武力を使わず政権の移行を促す体制奉還の素案をまとめ、土佐の藩論として上程し、慶喜が受諾。大政奉還はなり、徳川の時代を終わらせた。その一月後に暗殺された。

 

さて、話は変わりますが、私は現在ロサンゼルスに住み、全米一のコンテナ取扱港であるロサンゼルス港を見下ろせる場所で仕事をしています。SHIPFANという会社を立ち上げ、物流のコンサルティング業務やシッピングコーディネートを生業としています。

「お前と冒頭の大政奉還や坂本龍馬に何の関係があるんだ」と厳しいツッコミをいただくことになりますが、実はおお有りなのです。今回、この欄をお借りして「物流のイロハ・坂本龍馬と国際物流」についてすこし論を進めたいと思います。

私は文章家でも、研究者でもないので、うまくまとめることはできませんが、あくまで個人の見解・私見ということでお読みいただければ幸いです。

 

 

徳川慶喜が大政奉還を宣したあと、今後、誰を中心にどんな政権を作るかが皆の大きな関心事であった。薩摩と長州が中心になるとはいえ、土佐藩の名の中に坂本龍馬の名前がないのを見た薩摩の西郷が坂本に聞く場面がある。どうしてお前の名前がないのかと聞く西郷に対し、龍馬は自分は他にやることがあるといい、「太平洋に大船団を浮かべて世界を相手に大商いがしてみたい」(趣旨)と行ったと言われる。

まだ、新しい政権も誕生していないときに、すでに龍馬の頭の中では波濤を超えて日本にやってきた西洋列強の国々と海運、貿易という事業で対等に戦える日本の青写真を描いていたのであろう。

彼は長崎で亀山社中という会社を起こします。主な事業は、海運業、貿易業、金融行などに多岐に渡っていました。その経営理念は後に合流する三菱の創始者岩崎弥太郎にも大きな影響を与えたとも言われています。

龍馬は幕府が創設した神戸の海運操練所に勝海舟の弟子の顔で入所し、技術を習得。薩摩や宇和島などの藩に出資を募り一隻の船を入手します。彼は初めての購入、操縦する船なので、ことのはじめを意味する「いろは丸」と名付けます。この船は瀬戸内海を積荷をつんで運行中、操縦を誤った紀州藩の明光丸という船に衝突され沈没します。

剣を持って明光丸に殴り込みをかけると意気込む隊士を抑えて、「万国公法」をもとに裁判で決着をつけようと努力し、今の海上損害保険の原型にもなる損害賠償金を受取、勝利するのである。

残念ながら彼自身の構想は彼が殺されたことで実現はしなかったが、彼の意志は、その後、海運を整備し貿易を活発に行うことで明治の実業界の代表となる土佐の岩崎弥太郎や経済人渋沢栄一らに引き継がれ岩崎に至っては、西洋列挙の独壇場であった日本・上海航路から苛烈な運賃競争を通して列強の海運会社をその航路から追い出すのである。

また、その後、日本の海運界は日本の発展と相まって実績を伸ばし、まさに世界の7つの海をまたに掛けて縱橫無尽の活躍をするのである。そして海運とともに貿易を行う三井、三菱、住友などの商社が世界との商取引を通して日本の国力を高めることに成功する。

土佐の高知の桂浜に建つ坂本龍馬像は東の空を見つめていると言われます。東の果にある国、それはアメリカ大陸です。日本に開国を迫ったのもアメリカであった。第2次世界大戦後、日本はアメリカとの貿易により大きく栄えた。

 

太平洋に大船団を浮かべて世界を相手に大商いをしてみたいと願った坂本龍馬。

 

そして、その想いに共感した私自身が縁あって海運業界にはいり、龍馬が見つめる東の国アメリカのロサンゼルスで港を見ながら仕事をしている。不思議な気持ちである。まさに国際物流の基礎を造ったのは150年前に命を落とした坂本龍馬その人であると思うのは私だけだろうか。